見えないものを見る
電車の中を見渡すと、多くの人が下を向いている。 小さな画面に集中し、隣の人の存在にも気づかない。 見ているようで、見ていない。
毎日を忙しく過ごすうちに、自分の表情や心の状態にさえ気づかなくなることがある。 見えていることと、本当に見ることは、きっと違うのだろう。
「よく見てごらん」という言葉がある。 目を凝らすと、今まで気づかなかった色や形が浮かび上がる。 それは花かもしれないし、人の心かもしれない。 本当に見るということは、目だけでなく、心を開くことなのかもしれない。
ある古い書物に、「光が闇の中で輝いている」と記されている。 目に見える光だけが光ではない。 人の心を照らし、大切なものを見えるようにしてくれる光もある。
人は、見えないものを見る力をどこかに置き忘れてしまったのだろうか。 けれど、その光は今も、静かにそこにあるのかもしれない。 ただ、気づいていないだけで。
今日、もう一度、目の前にあるものを見てみよう。 そして、心の奥にも目を向けてみよう。 何が見えるのかは分からない。 けれど、見ようとすること自体が、すでに小さな光なのかもしれない。